デスクの独り言

第97回・2010年11月11日

お粗末な県の認識 

 北秋田市の鷹巣病院(中朗院長)の季節性インフルエンザ集団感染で、60代から90代までの入院患者8人(11日現在)の死亡者を出した"事件"は全国の知るところだが、これだけの数にのぼった異常さもさることながら、「県民不在」の県の情報公開のあり方はお粗末きわまりないとしか表現のしようがない。

 季節性インフルエンザの流行期を迎えつつあるとはいえ、ほんの10日間で同病院だけが8人もの死亡者を出したのはどう考えても尋常ではなく、他の医療機関や、高齢者が入所している特別養護老人ホームなどとは異質の決定的な原因があると考えざるを得ない。でなければ、先月31日−今月9日というきわめて短期間にこれほどの数の命がばたばたと失われるはずがない。

 49人が罹患、4人が死亡した2日の時点で同病院は北秋田保健所に連絡を入れたものの、部長、次長など県の担当幹部全員に話が伝わったのは5日。翌6日午後、県は報道機関に病院名を伏せた形で発表した。一方、県の公器たるホームページ「美の国あきたネット」で県民に初めて事実を公表したのは週明けの8日になってからだ。

 佐竹知事は「危機管理が不十分だった」と、10日の臨時県議会で陳謝した。形ばかり謝って済む問題ではなく、根本的な欠陥は現場職員の認識の欠落にある。まず、これほどの"大事件"にもかかわらず、報道機関に発表すれば自動的に県民に伝わる、と勘違いしている"丸投げ"の姿勢。

 情報発信ツールたる公式ホームページを運用しているにもかかわらず県は、報道機関に情報を提供した6日の段階でホームページでの情報公開は一切せず、週明けの8日になってようやく重い腰を上げた。「土、日をはさんでいたし、報道機関にはすでに発表している」などという弁解は通らない。「初めに報道機関ありき」ではなく「初めに県民ありき」の姿勢が、いかに大切であるかを忘れている。報道機関より先に公器を駆使して県民に事実を伝えるべきであるにもかかわらず、そうしなかった怠慢。そもそも「なんのための公式ホームページなのか」ということになる。

 北秋田市内の高齢者福祉施設のある管理職員は、こう語った。「同じ市内で発生した一大事であり、対応の指針とするために県の情報公開を見守った。しかし、新聞やテレビで事実を知らされるだけで県としてのタイムリーな公開は一切なく、県のホームページに情報が少しずつ掲載され始めたのは8日以降。認識の甘さを強く感ずる」。情報提供の遅さに対し、北秋田市でも不満の声は少なくない。

 さらに、県政記者クラブや鷹巣記者クラブなどに加盟しているか否かでの、報道機関に対する県の"差別"。6日午後に県がFAXを送ったのはあくまで記者クラブ加盟社に対してだけで、当新聞社を含む未加盟社は完全に無視された。つまり、「記者クラブに加盟していなければ、いかに重大な事案でも聞かれぬ限り情報提供する必要なし」という姿勢だ。これを県民の皆さんはどう受けとめるだろうか。当の担当部署は「差別? とんでもない。忘れていただけ」と、しらっとした顔で返すのかも知れないが。

 県はきょう、医療法に基づいて同病院の立ち入り検査を行ったが、落ち度だらけの県の調査では何とも頼りなく、厚生労働省が現地に赴いて徹底調査すべき事案ではないか。報道機関に情報提供すれば県民に伝わるという認識の取り違え、かつ報道機関に対する"差別"を含め、県の「危機管理」の裏側には、いかんともしがたい問題が見え隠れする。