デスクの独り言

第92回・2010年4月10日

「嘘つき党」 

 壁はまだ新しいのに、漆喰がぼろぼろ剥げ落ちている。民主党の話。前原誠司国土交通相は9日、高速道路の上限料金制を導入すると発表した。実質の値上げ。昨年の衆院選で「高速道路の無料化」をぶち上げたのは、どの党なのか。マニフェスト(政権公約)で胸を張って国民に約束したのだから、無料化に伴う減収分を別の財源で補う青写真も描いていたはずだ。

 にもかかわらず、国民の多くが期待していた無料化の約束をいともたやすく反故にし、平然と上限料金制を発表する。これを「嘘つき党」と呼ばずして何と呼べるのか。

 確かに、無料化にしてしまえばJRなどが、とばっちりを食う。といってもそれは、無料化によって逆風にさらされる企業が自助努力で克服すべき問題で、「高速道路の無料化」は国民に対するきわめて重い約束だ。国の支援など期待すべくもなく逆風にさらされている企業は、山ほどある。

 今回の前原大臣の発表は「やっぱり約束を果たせませんでした」と、悪びれることもなく民主の面の皮の厚さを示しているようなもので、実質値上げという詐欺的な対応に、国民の同党に対する不満は今後さらに高まるのではないか。

 それから、中学卒業まで子ども1人あたりにつき月額1万3,000円を支給する「子ども手当」と、年間11万8,800円を国が負担する公立高校授業料無償化。私立高校などの通学者にも、同12万円から24万円程度の授業料を補助する。これもマニフェストの大きな柱だった。不況から脱したという実感がなかなか湧かないご時世の中、高校生を含む子どもをもつ親にとっては何とも「ありがたい施策」ということになろう。

 自民など野党は「単なるばらまき」と批判しているが、それとは別の次元で民主の狡猾さが見え隠れする。子どものいる世帯が占める割合は高い。そうした世帯をつなぎとめておこうという意図。つまり、「子どものいる世帯、高校生のいる世帯におカネをあげますよ。でも、私たちが選挙で負けたら、そのおカネはあげられません。ずっとおカネをもらうために、選挙ではこれから先も私たちに票を投じてください」。建前は何とでも言えるが、民主の腹の内はそうであるとしか思えない。しかし、国民は見え透いた小手先の"技"にいつまでも踊らされるほど愚かではない。内閣の支持率の落ち込みでも、それは分かろうというものだ。

 そして沖縄県宜野湾市の普天間基地(飛行場)移設問題。あちらを立てればこちらが立たずの状態の中、調整能力が著しく劣る鳩山首相が地元、米国とも納得できる方向で5月末までに決着をつけられるとは、到底思えない。首相がいくら「米国の言いなりにならない」と思いたくても、じりじりと苛立っている米国に迎合するような策にならざるを得ず、ほぼ間違いなく沖縄県民に我慢を強いる最終結論がなされるだろう。まさに、前原大臣が発表した高速道路の新料金制度と同様、「泣くのは国民(地元)」である。

 さらに、小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件で公設第1秘書(元会計責任者)が起訴された問題。小沢氏みずからは起訴を免れたとはいえ、こうした事件や失態が自民など他の党で発生すれば、議員を辞任または引責辞任に追い込む糾弾姿勢を示してきたのが民主だったではないか。同氏は引責辞任どころか、今も党の中で絶大な権力を誇示している。他党なら有無も言わさず糾弾し、わが党ならお構いなしという、民主の本質を示す事象だ。

 「秘書が逮捕されたら議員をやめる」と、ぶち上げた鳩山由紀夫首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」をめぐる偽装献金事件。小沢氏の件と同様、他党に対しては徹底糾弾するが、民主の中では「臭い物に蓋をする」の姿勢だ。

 冒頭にあるように、民主の漆喰はぼろぼろ剥げ落ちており、夏の参院選ではかろうじて勝利するかも知れないが、いずれ国民に背中を向けられる時が来るであろう。

 といって、すでに国民に飽きられてしまった自民が再浮上できるとも思えない。与謝野馨元財務相や平沼赳夫元経済産業相らが新党「たちあがれ日本」旗揚げしたのは、いくら「非自民、反民主」を強調しても実質は与謝野氏が自民を見限ったにすぎず、まとまりの悪い自民がかつての勢いを取り戻すのは、民主が墓穴を掘るのを待つ以外になかろう。

 民主がこれからもマニフェストを反故にする可能性は高く、「私の任期中は消費税を上げない」とする鳩山首相の約束も「話半分」で聞くしかない。国民に「マニフェストは必ず実行します」と豪語して与党に押し上げてもらったのだから、いかなる障壁があろうと国民との約束を果たす。それこそが、民主が与党として生き永らえる唯一残された道ではないだろうか。