BANNER1903J.BMP - 134,574BYTES
トップ
お悔やみ
以前の記事
政治
経済
社会
選挙
コラム

デスクの独り言

第134回・令和7年8月16日
 
10億当てた男
 

 最近、中国地方に住む知人から興味深い話を聞いた。筆者を含むほとんどは一生のうち1度も経験できないことであろうから、このコーナーで少しだけ取り上げてみたい。

 ごく一部の知人や血縁などにしか知られていないことなので、このコーナーでも本人と特定できないよう「中国地方の50代男性」としか明かせない。

 仮に「Aさん」としよう。独身のAさんは、小さな料理屋を営んでいた。「天然の素材を使ったダシがとてもおいしい」と、贔屓も少なくなかった。

 Aさんはロト6を購入した。1〜43の数字の中から異なる6個の数字を選ぶ宝くじである。全国でただひとり、6個すべて的中したAさんの手元に、10億の富が転がり込んだ。

 当たった当時は現実と思えなかったが、後日、記帳しに行くと、0の多さに度肝を抜かして銀行内で気を失い、救急搬送された。

 「ちまちま商売をするのも阿保らしい」とでも思ったのか、Aさんは料理屋を閉めた。10億当たった奴がいるらしいとの噂が地元で広まる中、タイミングよく店をたたんだこともあって、勘の鋭い者が「おえーか?(お前か?)」と探りを入れた。が、Aさんは受け流した。

 妻子もおらぬ身。血縁といえば、兄がひとりいるだけ。「世界中を旅して10億使い切ってやる。もし残ったら、兄貴が相続すればいい」。思い立ち、Aさんはひとり旅に出た。

 世界中を観光してまわる、というよりは紛争地を含む本来観光客が行きにくい所を中心に転々としている。ただ、金遣いが荒いわけでもなく、ラスベガスでは博打にまったく手を出さなかった。

 強盗に会うこともないし、流れ弾にも当たらない。強運。「年に一度ぐらいふらりと戻ってきて、手土産をくれたりする」と、知人は筆者に語った。あやかりたいとでも思ったらしく、知人はロト6を始めた。

 くじ運が悪いと自覚しているので、筆者はいかなるくじも買った記憶はないが、日本をはじめ世界中にAさんのごとき巨額の当選者は存在する。そうした人たちを神がほほ笑んだのか悪魔がほほ笑んだのかは、知りようもない。が、いずれにしても以降の人生が一変するという点では多かれ少なかれ共通していよう。

 無論、「あぶく銭を使い切るぞ」という者の対極に、巨万の富が転がり込んだことをおくびにも出さず質素な暮らしを貫く者もいるやも知れぬ。

 唐突に違う人生が転がり込んできたAさんは今、異国の空の下でひとり何を思うのか。虚しいのか、最高の人生を満喫しているのか。共通の知人がいるということ以外、縁もゆかりもない人ではあるが、妙なロマンのごときものを感じ、このコーナーで取り上げてみた。