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第122回・令和元年5月1日
 
令和雑感

 

 30年余続いた平成の世が幕を閉じ、きょう5月1日、令和の時代が始まった。ほとんどの新聞をはじめ西暦を偏重する向きが強いとはいえ、ほぼ全国民がこの日を感慨とともに迎えたのではなかろうか。天皇陛下がきのうご退位し、きょう午前零時に皇太子さまが新天皇にご即位。昭和天皇崩御に伴って平成になった時と一変し、日付が変わる直前に各地でカウントダウンが行われ、新たな時代の幕開けを夜を徹して祝った所もある。きょうの日本は、まさにお祭りムードだ。

 あくまで筆者の主観的な印象だが、高齢者を含む一定の年齢以上の国民は改元以上に平成天皇のご退位と新天皇のご即位を荘厳な気持ちで受けとめ、次代を担う子どもたちを含む若い世代の多くは天皇が変わったこと以上に改元そのものに感銘を受けているのではないだろうか。

 新元号が「令和」となることが全国民に知らされた4月1日、安倍首相は「人々が美しく心を寄せあう中で、文化が生まれ育つ」と、令和に込められる意味を語った。本当にそのような日本に変貌を遂げられるなら、これほどすばらしいことはない。

 実際には「新しい時代になっても、犯罪はなくならないし、日本は何も変わらない。日々の生活も変わることはない」と冷めた見方をする国民は多いのかも知れない。しかし、理想と現実のギャップはどうであれ、社会が穏やかで平和なこと、つまり安寧を願う気持ちは誰にでもあるのではないか。

 新たな時代、国民生活はどう変わっていくのか。平成の世に急速な発展を遂げたインターネットやAI(人工知能)は、さらに進化するだろう。かつてはSFだった仮想空間が、パソコンやスマホといったハード端末に取って代わるのも、それほど遠いことではないのかも知れない。

 そして、移動手段として不可欠なクルマ。完全自動運転の元年は2021年、つまり令和3年が有望視される。安全性が完全に確立されるのはまだまだ先だろうが、いずれせよ、新時代は平成の世とはまったく異質のクルマ社会が待ち受けているような気がする。

 クルマを一例とする物質文明の進化もさることながら、令和の時代は日進月歩で進む医学のさらなる加速が望まれる。その最たるものは、ガンの克服ではなかろうか。クスリの服用だけで風邪を治すかのごとくガンを治癒できるなどという"夢物語"は、令和の時代には実現できないかも知れない。しかし、あまりにも多くの命を奪ってきたガンの克服は、国民全体、そして人類の願いであることに、誰も異は唱えまい。

 令和の初日、秋田県にも目を向けてみたい。課題は山積しているが、その中で筆頭に挙げられるのは何といっても人口減少をどう食い止めるか。県は健康寿命日本一を目指す取り組みや、若者の力やアイデアを活用した"新秋田"の創出に軸足を置いた施策に本腰を入れようとしている。

 県内の人口は、97万人割れが目前に迫る。そして、約20年後には県内世帯主の半数以上が65歳以上で占め、その3分の1超は独り暮らし、との予測が国立社会保障・人口問題研究所によってこのほど発表された。人口減少とともに少子高齢化が待ったなしで進む本県は、新時代こそ実効ある取り組みを加速させる必要がある。秋田にとって、まさに「正念場の時代」と言えよう。

 平成の世は、物質文明の進化に反比例し、精神文化をどこかに置き去りにしてきたような気がする。常識では考えられぬ凶悪事件も多発した。めまぐるしい速度で進む社会の中で、日本人としての心のありようを見つめ直すのはむずかしいことなのかも知れない。改元という厳粛な時代の区切りを迎えた今、令和に込められた「人々が美しく心を寄せあう」姿に、思いを馳せてみたい。

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