デスクの独り言

第84回・2008年1月30日

食品購入に冷や汗 

 胸を撫で下ろした、とはこのことかも知れない。きょう午前のこと。用事がてら久しぶりに訪ねる友人に手土産代わりの物を買おうと、大館市釈迦内地内のスーパーに立ち寄り、他の商品と一緒に冷凍食品を手にした。友人と食したのは昼ごろ。そして夕方近く、JTの子会社「ジェイティフーズ」(東京都品川区)が輸入した冷凍ギョーザの事件を報道番組で知った。殺虫剤に使われる有機リン系の農薬が検出され、摂食者の中には一時重体となった例もあるという。

 原因食品は「CO・OP手作り餃子」と「中華deごちそうひとくち餃子」の2品目とされたが、同社はこのほか「お弁当大人気! ミニロールキャベツ」「お弁当大人気! 豚肉のごぼう巻き」「お弁当大人気! 2種のソースのロールキャベツ」「お弁当大人気! 豚肉の3色野菜巻き」など市販用、業務用あわせて23品目を自主回収することに決めた。中国での製造過程などでこの農薬が混入したとみられる、としている。

 午前購入した商品はまさかジェイティフーズの商品ではあるまいな、と不安に駆られて屑かごから商品が入っていたビニール袋を取り出し、血の気が引く思いをさせられた。何とジェイティフーズではないか。「小籠包」(ショウロンポウ)=6個入り=という商品で、とりあえずはぎりぎりセーフで自主回収商品のリストからは除外されている。

 やや気を動転させつつビニール袋を凝視すると、<国産豚ひき肉使用>、「本品は国内で製造しています」とあり、中国にかかわる記載はどこにも見当たらない。振り返れば、同じコーナーには原因食品の餃子がごく当たり前に陳列されていたように思えるし、急きょ回収することになった他の食品も購入した商品の隣りに並んでいたような気がする。運良く、といって言いのであろう。それらを買い物カゴに入れず、「小籠包」を選んだ。

 例の(株)比内鶏の場合もそうだったが、後になって問題商品が続々と追加されることがある。今や偽装も珍しくない。この「小籠包」がそうだとは言わないが、<国産豚ひき肉使用>と表示しながら実は中国など海外の肉であったり、などだ。そうなると、問題はさらに拡大し、偽装したメーカーは徹底して社会の制裁を受ける。原因食品の餃子と今回購入した「小籠包」は、似たようなタイプの商品で、いわば"兄弟同士"のようなものだ。くれぐれも「小籠包」が、まっとうな商品であることを祈る。

 それ以前に、納得がいかないのはジェイティフーズの企業姿勢。同社が30日の記者会見で明らかにしたところでは、昨年12月28日に最初の健康被害の報告があり、次に同様の報告があったのは今月の7日だ。最初の報告を受けた約1カ月前に問題把握はなされていたわけで、以降、原因商品の回収をはじめとする対策を何ら講じてこなかったことになる。同社の釈明では、有機リン系の農薬が検出されたとの連絡を警察から受けたのは記者会見の前日(29日)のことだったので対応しなかったとの意味合い。そのような説明に納得しろ、といっても無理な話だ。1カ月も腰を上げずに問題を放置してきた企業姿勢は、今後糾弾されて然るべきものであろう。

 一連の商品は中国の「天洋食品」から輸入したとのこと。ある意味では、ジェイティフーズも被害者にあたる。しかし同社の親会社、日本たばこ産業(木村宏社長)が自社ホームページに30日に掲載を開始した「冷凍食品の一部回収について」と題する文面は笑止千万だ。一部引用すると、こうである。「お手元に下記記載の商品がございましたら、決してお召し上がりにならず、大変お手数ではございますが、下記記載の送付先に送料着払いでお送り下さいますようお願い申し上げます。この際、商品の中身が残っておりましたならば、商品の中身もお送りいただきますようお願いいたします。後日、お品代をお送りさせていただきます」。

 その部分からは、ある程度の誠意は感じられる。だが、「今回、かかる健康影響を受けられたお客様の一日も早いご回復をお祈りするとともに、お客様やお取引先様に多大なるご心配とご迷惑をおかけしますことを、心よりお詫び申し上げます。弊社におきましても、品質管理体制を強化して参りますので、何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます」。これは何なのか。子会社が問題の商品を販売、あるいは卸したというのに、まるで人ごとではないか。

 つまり、1カ月にわたって何も対処せずに放置してきたが故に、全国の多くのすでに食べてしまった、その中には死にかけた人もいるというのに、「健康被害を受けた皆様には、今後誠意を持って対応させていただきます」との表現はどこにも見当たらない。「食うな」「捨ててしまえ」と、現在、あるいはこれからのことのみを論じている。

 舛添要一厚労大臣の記者会見も同様だった。「冷蔵庫からすぐに取り出して捨ててください」のみである。まるで、臭いものには蓋をしろとでも言わんばかりに、すでに健康被害を受けてしまった全国の人たちについては何も触れていないし、無論、「企業はそうした人たちに誠意を持って対応すべき」とは一言も発していない。まさに、全体像を見ることのできぬ者であり、国務大臣としての資質を疑問視せざるを得ない。