デスクの独り言

第74回・2006年10月9日

国際社会の鼻つまみ者

 北朝鮮はなぜこうも、近隣諸国はもとより世界中の神経を逆撫でするようなことばかりするのだろうと不快感をつのらせてきたが、9日にはついに地下核実験に成功したと発表した。ここまでくると、国際社会の鼻つまみ者どころではない。いつ「仕掛ける」か分からぬ、いわば地球にとっての脅威と断じざるを得ない。

 9日午後8時現在、日本政府は「事実関係を確認中」としているが、北朝鮮がみずから地下核実験に成功したと発表したことや、「きょうやる」と中国側に事前に伝えたこと、さらには気象庁が推定マグニチュード4.9の通常とは異なる地震を観測したことなどを総合すれば、北朝鮮が地下核実験を強行したのはほぼ間違いのないところであろう。

 朝鮮中央テレビは9日、いつもの声高な調子で地下核実験を実施したと放送した中で、最後に「これは、朝鮮半島と周辺地域の平和と安定の防衛に寄与するだろう」などと結んだ。無論この内容は、北朝鮮政府があらかじめ作成した原稿を読みあげたにすぎないだろうが、平和と安定の防衛に寄与するどころか、この事態はまさに一触即発への危険度が飛躍的に高まったことを意味するといえよう。今回の核実験強行は「俺を怒らせたら怖いぞ。だから、俺を大切にしろ」と世界に向けて脅迫しているようなものだ。別の見方をすれば、「俺の望みを聞き入れるなら、核カードを引っ込める用意はある」という、違う意味での脅迫になり得る。

 恐ろしいのは、北朝鮮首脳部というより、頂点に君臨するただ1人の人物ではなかろうか。あとの者たちは、単なる駒にすぎないように思える。北朝鮮はすべてが、彼の胸先三寸で動いているように見えるし、実際、紛れもなくそうだろう。今回の地下核実験も、事実だとすれば彼の最終判断で行われたことは想像に難くない。

 「脱北」という言葉がある。耐え切れず、国民が死を覚悟で北朝鮮から脱出しようとする。脱出に失敗した、あるいはそれに加担した村人は、集まった村人らの前で銃殺されることさえある。見せしめ。いわば、完全に神格化された1人の人間を頂点とするピラミッド国家の中で、厳然たる恐怖政治がそこでは行われている。

 そして、平気で日本を含む近隣諸国から善良な市民を拉致し、現時点でも国家として誠意の片鱗すら見せていない。そのような国が行う地下核実験が「平和と安定の防衛に寄与する」など、信じろと言っても無理な話だ。そもそも北朝鮮からは国際社会と融和する誠意はまったくうかがえないし、今回の「発表」は数えるほどしかない友好国をも激怒させている。

 こうなると、孤立無援以外の何ものでもない。そうした中で核保有国になること自体、まさに「きちがいに刃物」であろう。地下核実験実施が事実だとすれば、早急に国連安保理で制裁決議をし国際社会が一丸となって、北朝鮮の「核の恐怖」を封じ込めなくてはならない。ただ、制裁の仕方を一歩間違うと、北朝鮮はますます意固地になり、何をするか分からないという恐ろしさはつきまとうが。

 今後注目される一つには、北朝鮮に対して最も苦々しく思っている米国、つまりブッシュ大統領の出方が挙げられるのではなかろうか。米国民の理解はもはや得られぬため、イラクに対して行ったような"愚挙"は著しく支持率が下がっているブッシュにはできようはずもないが、堪忍袋の緒が切れたら独自の強硬な出方をすることもあるのではないか。

 ところで、北朝鮮が初めてテポドンを飛ばした際、当時の自衛隊秋田地方連絡部大館出張所長が「大館市民の誰も気づいていないのですが、テポドンは大館の真上を飛んで行ったのですよ」と耳打ちしたことがある。歳月は流れ、改良に改良重ねて北朝鮮は長距離弾道ミサイル・テポドン2号を作りあげた。ミサイルは今や米国にも届く性能を有し、米国はそれに対する迎撃態勢を整えている。極論を言えば、戦争勃発はたとえ0.01%の確率でしかなくとも、常に想定しなくてはならないということだ。

 国際社会に対して貸す耳を持たぬ北朝鮮は、今回が事実だとすれば、今後幾たびとなく核実験を重ねて核兵器完成にこれまでどおり執念を燃やすであろう。話の通じぬ相手が恐ろしい核兵器を完成させた時、真の恐怖が地球に迫る、と言えるのではないか。そのためにも、世界は今こそ一つになり、北朝鮮の核の脅威を根絶やしにしなくてはならない。 (午後8時)