デスクの独り言
                           
第45回・2003年2月16日

厚顔無恥

 コラムで三度(みたび)辻元清美氏に触れるとは、思いもしなかった。同氏については昨年5月以来の執筆。過去2回とも、きわめて厳しい指摘をした。今回は、辻元氏本人というより、政治家なる種族の厚顔無恥ぶりに呆れつつ、パソコンのキーボートを叩いたと形容すべきかも知れない。

 今月15日に開かれた社民党大阪府連の会合。大阪府議でもある隅田康男・府連代表代行が前党政審会長だった辻元氏を次期衆院選大阪10区に擁立する考えを明確にした。無論これは隅田氏個人の考えであるはずはなく、同府連の総意と解してよかろう。

 まがりなりにも辻本氏は政策秘書の給与流用問題で衆院議員を辞職した人物である。有権者や国民を欺き失望させた政治家は、何事もなかったかのような顔をして再び政界に出るべきではない、と"辻元論"の初回で強調させてもらったが、同府連は「あの問題はもう終わったことだからいいでしょう」とでもいわんばかりに、再び辻元氏を担ぎ出そうとしている。政界に未練でもあるかのごとく、辻元氏本人が議員辞職後も府連の代表を辞していないことからしても、擁立要請を辞退するとは考えにくい。

 同氏が未だに府連代表の座に居座っていることに対し、100歩譲ったとしよう。が、代表でありながら月1回の常任幹事会にも顔を出さず、それすらもよしとして再び中央政界へ担ぎ出そうとは、同府連執行部はどういう精神構造をしているのか。無論、辻元氏のファンはまだ全国に少なからずいよう。「ぜひ再出馬して」と応援する者もいよう。仮に出馬要請を受け入れたとして、記者会見や出馬表明の第一声で彼女はいかなる言葉をつむぎ出すのか。「多くの支援者の要請に応え」「まっさらな気持ちで政界に」「もう1度だけチャンスを」等々、政治家特有の口八丁で何とでも並べ立てられる。

 再びいいたい。「灰色」や「黒」として政界を去った人間は、舞い戻ってはならない。それを許すと、それがあたりまえとなり、そうした馴れ合いが日本をさらに悪くする。経済を、そして国民生活を一層悪くする。"出戻り"を許すと、政治家が、政治が、なおも腐敗する。願わくば、辻元氏には「潔く政界を去った人間ですので、出馬要請はご辞退申し上げます」ぐらいの姿勢を見せてもらいたい。

 が、そうもいくまい。15日の府連会合に出席した土井たか子党首は、大阪から2議席を国会に送ってほしい、と暗に辻元氏擁立を了承する発言をしている。こうなると、辻元氏が議員辞職をする以前から緻密なシナリオが用意されていたのではないか、と思いたくもなる。辻元氏辞任に絡んでは土井氏本人も物議をかもした経緯があるが、いずれにせよ「辻元氏を再び出馬させるなら、あの辞職はいったい何だったの?」と理解に苦しんでしまう。多くの良識ある有権者も同様に思うのではないか。

 政界は魑魅魍魎(ちみもうりょう)の住む世界であることは百も承知だが、事実上辞職に追い込まれた人間を再び政界に送り出そうとする神経、そんな大人たちを目の当たりにする子どもたち、次代を担う世代はどう思うだろう。政界に住む者。正しいことは正しいこと、悪いことは悪いことと、せめて善悪の判断ぐらいはできるようになってほしい。でないと、国民、有権者にこういわれることになる。「やはり彼らは厚顔無恥なのだ」と。

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